僕らはもっと繊細だった。

夜行バスで東京に行き、ムンク展を観た。リーキット展には行っていない。上野公園の広大な敷地に幸せそうな人がたくさんいた。
夜に高校のときの美術部の先輩に会った。先輩が卒業してからずっと会っていなかったから約3年振りの再会だ。先輩は何も変わっていなくて相変わらず可愛らしい方だった。
私が高2のとき、帰りの玄関から勉強している姿がいつも見えていた。いつだったか先輩に用事があってクラスを訪れると先輩は授業終わりの数学の先生に質問をしていて、担任の先生は私たちに「〇〇はこうなると長いよ」と言った。先輩は東大を目指していた。私は、勉強熱心でいつも目を真っ直ぐに見て話してくれる先輩が大好きだった。
3年振りの席で私たちはお互いの大学の話をした。
今、関東圏の大学の医学科に所属している先輩は「みんな遊んでばかりだ」とか「私は研究に向いてないと思う」とかいうふうな事をポツリと言った。
変わっていないように見える先輩や私たちも何かが確かに変わっている、変わっているというか全く別のものになっているような気がした。また人生とは往々にして上手くゆかないのであるとなんとなく分かってしまった。私などはすべての選択をミスしてきたようにさえ感じる。私や先輩が現状に幸せを感じて笑える日の遠さを思った。