タルパ

ロマンチスト達の事は知らない、自分は早く死ぬと思う、不摂生だし国有林の場所を知っている、国有林までは遠く暗い道を進むことになる、そのときは1人だ、身軽な出発は良い気分だと思う、ポカリをごくごく飲んだ分だけ体がジメジメした、ポカリ味の汗、ウイルスの部品を覚えたこれまでとは違う体を得たわけだ、成し遂げたいことなんか何一つない、安静にする15分の間ルルフォのタルパを再読した、死体に被せた土を踏み固める感触、この世界は死体を飲み込む巨大な一つの墓でしかなかった、墓の上を自転車で軽やかに漕いでゆく、初夏の風が通り抜ける、もう蝉が鳴いているという、頭に浮かぶのは外国人労働者のことだ、駅にはオリンピックの横断幕が飾られていた、金銭なんて一部にとっては掃いて捨てるほどあるゴミでしかない、それで死ぬ人間がいるとしても無関係に堅強な仕組みが終わることのない搾取をし続ける、仕組みの中でみんな普通に生きている、成し遂げたいことがある人間の話はつまらない、つまらない人間ばかりだ、フラフラ遊んだ土曜の早朝にタバコを全部水に濡らして捨てた、自分にとっては何にも依存しないことが重要だったらしい、今って何歳だっけと毎日思ってる、昼寝の国で年齢は関係ない、人と会って笑った分だけ内側の空洞が広がっていく、叩いてみると深いところで反響した、覗き込むのはやめた方がいい、ここに生活はなく溶けきった時間だけがある、気づけばまた朝が来て細い針が指を刺した、昨日と同じ鳥の鳴き声が鼓膜を揺らして静寂が訪れる、どうでもいいことが多い、梅雨はもう明けたのだろうか 終わり